(社)腐食防食協会会長の推薦の辞



      専門士会の発足に寄せて 
 
           (社)腐食防食協会会長 辻川茂男
        (注:辻川様は腐食防食専門士会発足時の会長)


 昨年度(注1)杉本副会長の御指導のもと当会はじめての資格認定制度をつくっていただき、初年度11名の腐食防食専門士が認定されました。これらの方々が高い知識と広 い経験とを生かされて腐食(科学)と防食技術の正しい普及を図っていただくようお願いいたします。
 腐食現象の科学的理解が確立されたのは1930年代で比較的近年のことですが、そのように新しい学問といえどもはるかに古い医学などとおなじくその防止(防食技術)に役立てねばならぬという強い実学要求を受けています。当会の改正会誌名として1991年から掲げます『材料と環境』において、『材料』には従来の金属に加えプラスチックス・セラミックスを含むのは今日では当然のことですが、さらに悩ましいのが『環境』の多様さで、一々が含む微量成分までが大きな違いをもたらします。このように膨大な『材料』x『環境』の組み合わせは到底一人・一代の知見でカバーしうることではありません。そこで、わたしどもは新しく経験された方と共に見・聴き・考えるという姿勢で問題に取り組むことになります。それゆえ上記の普及の具体的な形も腐食相談とよんでいます。
 専門士の方々が今回発足された専門士会は今のところ当会の正式組織ではありませんが、上にあげました腐食の特徴に照らしてもその必要性は自明のことと理解できます。すなわち、腐食相談をうけた当初問題の在り処を見極めるには近くの専門士があたられましょうが、たとえば不得意分野については他の専門士の主担・分担を求める必要がありましょうし、対応の形式によっては協会内の他組織―腐食センター、分野別委員会、分科会など―に聴いてみるのもよいでしょう。これらについて専門士会が適切な役割をはたされるようねがいます。
 腐食による国家的損失がGNPの数%に達することをわが国ではじめて明らかにした1975年の調査をうけて、これらの低減のため腐食センターの設立が模索され、遅まきながら1993年1月から試行がはじめられ約10年を経過しました。小規模ながら、学問の今日的レベルに恥じない中立・公正な見解で応えることにつとめ、すこしずつ社会的にみとめられるように育ってきています。専門士および専門士会はこの腐食センターともよく連携して同じ目的をめざされるよう希望します。
 製品・設備の販売による入金に比べて、その後使用される中で現れる不具合の主 因としての腐食はこれまでは嫌われる出費であったかもしれません。しかし、このような調査にずいぶんな時間と人手をかけたのちセンターに持ち込まれた事例も少なからず出てきました。この場合に専門士に早めにもちこむことのメリットが一搬に認められてゆけば、やむなく『腐食が専門でない人』が腐食相談や調査に係わっているときく実状も改善できましょう。この点では 腐食センターがこれまで積極的なPRをほとんどしてこなかったことは反省すべきかもしれず、この面でも両者の連携が望まれます。


 注1(専門士会作成の注):平成15年度